いかなごのくぎ煮
関西のかたがツイッターにこんなコメントをアップされていて、それはそれは印象的でした。
「フェイスブックに友人が『いかなごのくぎ煮』を今年も作りましたー、とアップしていた。学生時代はボディコンでイケイケだったあの子が『いかなごオカン』になるなんて、感慨無量…」(要約)
この「いかなごのくぎ煮」、日本の郷土食を取材するようになってから注目してたんですが、関西の一部では春の風物詩なんだそう。いかなご、関東だと「こうなご(小女子)」の名前で知られているもの。くぎ煮は、いわゆる佃煮をイメージしてください。
関西の一部では大変ポピュラーというか、これがなくては春が来ないぐらいの勢いと聞きます。私は以前にお邪魔した神戸の食セミナーで知りました。神戸にある「きっしゅや」(その名の通り、キッシュ専門店)さんではこのくぎ煮をキッシュの具にもされていて、驚いたものです。
(その後調べてみたら、くぎ煮をだし巻玉子の具にしたり、コッペパンでサンドイッチにしたりと様々に活用されているよう)
それから興味がわいて、関西圏の友人知人に訊いてみたところ、まあ情報が出るわ出るわ。
「春になるとそれこそ憑かれたようにオカンたちが作り出すよ」
そ、そこまで…(^д^;)マジ?
「多分、DNAに作ることが組み込まれていると思う」
などというコメントを貰い、すっごく興味がわいていたのでした。
なので、ツイッターでさらに質問。するとまあ…たっくさんの情報を頂戴しましたよ。ここにまとめておきたいと思います。
○春の名物・クギニーネたち〜作るエリアは?
個人的に一番面白かったのが、この情報。
「関西では、いかなごレディー達をクギニーネって呼ぶのが流行ってます」
いいなあ…こういうの。ますます興味がわいてきました
まず、作られるエリアを調べたいと思って訊いてみたんですね。
「淡路はやります。兵庫県の瀬戸内側と淡路島あたりかなあ」
「梅田の阪急でも入荷しだい皆が殺到して買うようなこと聞いたことがあります。わたしはシーズン初めの小さめのやつが好きです。あまり甘くないほうがいいな。本場のは水あめ使ったりするから甘すぎるんだ」
「後輩の実家は正確には高砂市(加古川隣ですかね?)で、やはり『春になるとどの家も一斉にくぎ煮炊き始めるよ〜』と教えてくれました」
「東大阪だけど、作る。でも兵庫の料理」
宝塚の方も情報をくれたのですが、
「うちはオカンが料理をあまりしないので作りませんが、買ってきて食べます」
とのこと。
○とにかく送る
オカン連は作ったら問答無用で送るんだそうです。
子供や親類縁者に。ええ、どこにいようと。
私が聞いた情報だと、ニューヨークやパリに仕事で赴任している子供のところにも「いかなごの釘煮」はオカンから送られていました。ちいさな体でいかなごは世界中を旅しています。
調べてみたら、関西のいかなごエリアでは郵便局や宅配会社も専用の「いかなごパックサービス」を設けていました。凄すぎる……。
いかなご、鮮度のいいものをすぐ炊くのが大事なんだそう。甘め、辛め、あっさり炊き、ねっとり炊き、各家庭で味わいが違うそうです。こんなエピソードも。
<A子さん(神戸出身・東京在住)>
「おかん、宅急便届いたけど、なんで釘煮のタッパー3つも入ってんの?」
「私が作ったやつと、おばあちゃんのと、朋子ちゃん(ママ友)の。味つけ違うねん全部。A子ちゃん食べていうてみんな」
これ、ザラみたいです。「叔母の数だけ釘煮は送られてくる」という人も。くるみを入れる、という方もありました。おいしそ。
○まとめ
・呼称
「いかなごオカン」「いかなごレディ」「クギニーネ」という呼び名がある模様。
・味つけ
甘め・辛め、粘度の差、色合い、いかなご自体の大きさ、これらが絡み合って味つけが分かれる。
・その他
1年分作る。作ったら遠くにいる親類に送る。どこにいようと。
これからもいかなごの釘煮、個人的に見つめていきたいと思っています。
ちなみに先日は渋谷西武の地下にもありました。おいしかったです(写真撮り忘れた…涙)。
※のちに近所の目黒区大橋のスーパーでも発見。