西麻布『祈年』

 カチャッ。

 こころにピッタリとハマりました。ハマっていまだ取れません。ここの味わい…ここのお蕎麦…ああ、好きだなあここの味!

 白いのが「吟白」と名付けられた更科十割水ごね、もうひとつが蕎麦の実を発芽させて打ったという「豊穣」というお蕎麦。どちらも本わさびをつけてズルッとすすると、いい香りが頭の芯さきに向かってフワンと抜けていくかのよう。そのおいしい空気を口に鼻にまた漂わせたくて、手がまた急ぐ。あっという間にたいらげました。
 品書きを見ればつまみもおいしそう。はよまたこの暖簾をくぐりたいなりおらが春。 

 蕎麦湯をつゆに入れ、わさびをちょいのせ。最後のこの時間がわたしはなんとも好きだ。からだの澱が霧消していくかのよう。