上石神井『竹内鳥肉専門店』

 仕事で石神井のほうへ向かうことになった。

 ちょっと早く着きそうだったので、思い立って途中下車。高校時代、3年間通った上石神井に寄ってみた。

 学校の帰り道によく通ったあの店、まだあるだろうか。小さな店だから、どうだろう。ないだろうな。あってほしい。確かこっちだった。こんな道だったかな。




 まだ、あった。

 うわー……。

 なんだかじわじわと、ものすごく、嬉しくなってしまった。この焼き鳥をよく食べたなあ。

「18年ぶりに食べるんですよ」

 思わず店員のお兄さんに語りかけてしまった。

「じゃあ……まだオヤジのころか、もう私がお店に立ち始めたか、ってころですねえ」

 その男の店員さんの外見からすると、3、4歳ぐらい年上だろうか。たしかにこのひとがいたような気がする。



 食べるのがちょっと怖かった。

 昔、うまいうまい、と食べていたのだ。ケンタという友達とよく食った。あいつはここの焼き鳥がものすごく好きで、帰り道によくあいつが誘って、それで食べていた。何かの賭けで負けたら「あそこの焼き鳥2本!」なんて「賭けしろ」にしたこともあった。

 それを「これがうまかったのか」と思ってしまったらさびしい。なんてことを考えていたら、どんどん冷めてしまってまずいと思う確率が上がってしまってさらによろしくない。

 焼き鳥から食べた。うまかった。嬉しかった。



 我が母校。もう自分がいた校舎はこっぱみじんに壊されていた。新しいきれいな校舎が昔アーチェリーかゴルフ部があったところに建っていた。あそこにあった枝垂れ桜が移植されているといいのだけれど。
 そんなことを考えていたら、当時のフランス語の先生が歩いていらした。
「あ、覚えてるよ!」
 嬉しかったが、私はその先生の名前をどうしても思い出せなかった。フランス語の先生、と話しかけて「ウン年前卒業のハクオウです」と話しかけて、そのまま名前を伺えず話を終えた。


 追記。キッチン南海はつぶれていました。