神泉『あじくら』
「会社辞めようと思う」
そんなメールが、長年の友人Xから届く。同級生だ。
実際会ってみたら、さほど切羽詰った感じでもなかったので、ちょっと安心。けれど、ゆるやかにこぼれた気持ちというのは、より切実なものかもしれない。私生活のこともダブルで悩んでいるよう。
「ただもうほんとになにごとも面倒くさい」
それでもこのひとは真面目だから日々働いている。適当に流すことができない。休みも取れない。
だからどうにもならないのはお互いに分かっているから、しゃべって、飲む。こういうときはホルモンだ。何の根拠もないが。神泉の『あじくら』へ。
「予約してないんですけど、入れますか?」
あえて電話をしないで行った。ここは人気で平日でも予約必須なのだ。
「ドウゾー」
おおお、入れたよ! ラッキー! ちなみにここの店員さんはみんなスリランカ人なのだ。なぜかは分からんが。なのでカタカナでセリフ表記。そのつもりで読んで下さい。
あとから入ってきた人がみんな予約なしで断られている。
X「ラッキーだねえ」
白「ほんとだねえ」
X「ねえ」
大丈夫、ついてるよ、X。うまくいくよ、とは言葉にはしなかった。でも、そういのってます。
すこしは毒出しになったのならよかったのだけれど。