中目黒『バッチョーネ』

 おいしかったなあ……。思い出すと遠い目になってしまう。久しぶりに「うわーこういう味があるんだなあ」という新鮮さを感じ入る。まだまだなんにも知らないな。

 こちらで出会った「ウスヒラタケ」という茸が激烈にうまかったんだわ。素材だけを褒めるのも失礼ですね、もちろんそれを選ぶ眼と調理の良さがあるからでしょう。こちら、1000円のパスタランチもやってらっしゃるが、1600円からのランチコースをオーダーした。
 メインに蝦夷鹿のグリルとあって、これが食べたかったのだ。「鹿の味」というものをしっかり舌で理解してないので、その情報収集をしたかった、というのが正直な目的。
 それが。

 もちろん鹿もおいしかった。つけあわせのインゲンと……豆はなんだったかな、とにかく豆を荒く挽きつぶしたペーストのガルニも素敵だった。そんなこんなのもろもろを吸ったこの茸で、びっくり。パーンと目を覚まされたような気分! このとき実際「おいしいい!」と目をパッチリ見開いて喜んだらキッチンのひとと目が合ってしまった。あはは。

 あんまりおいしいんで、忙しくなさそうな頃を見計らって「これだけちょっとソテーしてくれたりなんかしますか?」とお願いしてみた。快く引き受けてくださった。そして私はテレビショッピングで絶妙の「相の手」を入れるベテラン女優のごとく「でも、お高いんでしょう?」的なことを訊いたんだが……(一応値段も訊いとかないと怖いでしょう)あっさり
「500円で」と。
 なんていいお店だろう。テンションアガリマシタ。

 白を呼ぶ味だったので何かグラスで、というと2種持ってきてくださった。選んだのがこちら。お、うまいぞ。そしてこれも1杯500円。グラスもきちんとされていて、嬉しい。嬉しいなあ。
 大体こちら、ランチはグラス、500円と7〜800円のものを用意されているよう。

 話が変なところにいってしまった。ちなみに鹿のときに飲んだのがこれ。

 あんまりにもウスヒラタケがおいしかったので、これで「パスタ食べたいんだけど……」とせがんだら、「ちょっとお時間頂きますが、それでも大丈夫ですか?」と。あみん。間違えた、待つわ。ええ待ちますとも。

 それで登場がこちら。パスタマシーンをまわしまわし作りたてのもっちもちフィトチーネで茸の香りがたっぷりクリームにうつっててああ……。

 ちなみにこれが前菜の牛タンとトレヴィスのサラダ仕立て。これもしゃれた味つけでおいしい。

 ドルチェのレモンタルト。さっぱりしつつ、こってり甘い。正しい。

 天然茸もいろいろ食べているけれど、天然だからいいってもんじゃないですね。状態・調理によって全然だなあ。私はまだまだ何も知らない。