「にはま」


 煮蛤!


 ものごとを縮めたり省略して話すのが、私はどうにも嫌いだ。けれど、それは外来語に限ったことかもしれない。寿司屋で煮蛤に一年ぶりに出会って、そんなことに気づかされる。
 煮蛤は「にはま」と縮めないと、どうにも感じが出ない。「にはまぐりください」では、春の旬を少し割り引いて味わったような気になってしまう。
 いつの頃からは判然としなくとも、何代にもわたり人の口を経て、「にはまぐり」が「にはま」と詰まっていった。そんな「時間」を感じるからだろうと思う。

 甘いタレがとろりと垂れる大きな蛤。貝合わせの明日は、ひなまつりなのか。