谷町4丁目 『ほむら』

大阪府旗



 大阪出張中。
 今は東京に住んでるが、元々大阪人の友達・ムネタカに電話。
「このへんでどっかうまい店知ってる? 今シェラトン都ホテルに泊まってんのよ」
「おおお……それならば絶対に『ほむら』っす。絶対に行ってほしいです」
 なんとも熱のこもった推薦トーク。ホットな思いに推されてタクシーに飛び乗りいざ喰らわん。


 谷町4丁目の交差点からほど近いところにお店はあった。
 大阪府庁とかNHKがそばにあるよう。いわゆる官公庁街らしい。カウンター6席、4人がけのテーブル2席という小体なお店で、壁には食べ物と酒のメニューでいっぱい。ちょっと暗めの店内で、カウンターが1席だけ空いていた。若いご主人とさらに若い男の子(なんていったら失礼か。でも20代前半とおぼしき方)の二人でやられているよう。あきらかに常連なおじさんたちがうまそうに、でも品良く飲んでいる。




 ムネタカに
「何がうまいの」と訊いてすぐ応えてきたのがこの「酒盗マスカルポーネ」。最近出す店も多くなった人気の酒肴。よけいなお話ですが、これバターでトーストしたパンでサンドイッチにしてもうまいのだ。 

 隣の人が食っててあんまりうまそうだったので頼んだ餃子。注文が入ってから包んでくれる。色のどぎつくない、ちゃんとした紅しょうがが練りこまれていて面白い。自家製のラー油だと思うが、タレも良かった。

 こちらのご主人、パクチーが好きなようで「パクチーサラダ」なるメニューがある。パクチー狂いとしては早速オーダー。もっとクセが強いかと思ったら、さっぱりした和え物風にまとまっている。いい意味で、品良い。
 「ほむら」さんのメニューは、他にも味や香りの強い素材を使ったものが多い。しかしいずれも、整然とした綺麗な味にまとめられる印象を覚えた。これは後から分かったことだけれど、ご主人は特に名を秘すが某有名料亭で修行されたんだそうだ。
 なんとなく、納得。

 あ、そうそう。パクチーを「ミント・ジュレップ」のようにしたカクテル風のドリンクも新規考案、今日がお披露目なんですよ、とご主人が言ったら、「じゃあそれ飲んでみるよ」と常連さんが早速トライ。「ちょっと飲んでみる?」とおすそ分けして頂くなんて一幕もあった。結構うまかったなー。

 そうなんですよ、隣の人や居合わせたお客さんにも今回は当たった。気さくな方々でいろいろお店のことや大阪のことなどを教えてくれる。
 隣の人がうまそうな漬物をアテにしていたので、早速真似。らっきょう、オリーヴ、クレソンの漬物3種盛り。もろみ和えみたいになってるオリーヴがうまかった。

 ムネタカに「うまいよー! ありがとうー」というメールを送ると「レバー炙りは食べましたか」とのリプライ。早速注文。うううう、うまいっ! 実は最近焼き鳥をとある仕事で食べ歩いているのだけれど、東京のトップクラス(だと思う)焼き鳥屋のレバーに比肩して劣らず。このへんで酔っ払ってきて、味つけに関して突っ込むのを忘れてただ喰らっていた。いやそれでいいんだけどさ。

 今回一番衝撃的だったのが、この「牛脂カスうどん」。麺もよけりゃスープもいいっ! 殺人的に食欲をそそる香り、一体なんなんだろう。すごく上品だけど実は物凄く淫乱な美女のよう。あああああ今日も食べたい。どうしてこんなうまいものが東京にないんだろう、などと傲慢なことを考えてしまう。
 それと最後に、安いよ。東京なら倍取られていると思う。酒6杯、飯6品で6000円(ひとりで食べて飲んだ金額)也。