新宿『天狗』

 この日は友人M子と新宿で本谷有希子さんの映画『乱暴と待機』を観たのち、『天狗』へ。

 バーニーズから歌舞伎町へ渡る横断歩道の手前にある天狗。大学生らしき若者でいっぱい。しょっぱい大人もいっぱい。
 このM子は大学に入って一番最初にできた友達である。今では編集者だ。あの頃はワイズなんか着ていてコスメおたくの女であったが今では見事に「おっさん」に変態を遂げた。店に入る前、新宿三丁目をブラブラ歩いていたら「チョコボール向井」とすれ違った。分からない人は調べなくていい。間違っても画像検索なんかしちゃダメですよお嬢さん。

「あ、チョコボールがいたよ」
 といったら
「ああ、駅弁のひとね」

 そうさらっと言ったのには驚いた。コンプリート・おっさんである。花も恥らう娘さんであったのに。ひとの人生とは分からないものだ。こんなM子と久々に飲んだ『天狗』in 新宿。テーブルの向こうには男女入り混じり盛り上がっている若者、かつての私たち。そして後ろでは会社の愚痴とおぼしきクダを大声で巻いている50代のおっさんがふたり。未来の私たち。『天狗』は縮図である。

我が青春の味、『天狗』のサイコロステーキ。学生時代によく食べたなあ。とかなんとか好き放題書いているが、スカンピンのフリーランスを哀れんでM子はおごってくれたよ。ありがとうM子。いい女だ。と最後に焼け石に水のフォロー。