銀座『ささ花』

 来年の配り物の扇を決めるため、S先生からちょっとつきあってくれとのメールが届く。元歌舞伎座前で待ち合わせ、『竹葉亭』の並びにある『壽扇』へ。
「この職人だと色が淡く出るんですが、こちらの方だと割合にはっきり出ますね。兄弟弟子にあたるそうですが」
 先生と店の方が話すのをただ私は聞いているだけなんだが。扇の色を決める上で様々な見本が出てくる。日本の伝統職の名前が飛び交う。まさに「色々」。

 扇に入れる紋の大きさ。「骨」の色。散らす飾りの色。金でも鈍く光るすこし地味な金色を「金泥(きんでい)」と呼ぶのか、なんて思いつつ、しらーっとした顔でさも検分しているかのような目で隣に座っている。扇ひとつ作る上でいろんな決め事があるのだな。

 S先生は古典芸能の世界ではひとかどの方で、たまにふと何かを口実にご飯に誘ってくださる。万年の「ひよっこ」を哀れんでの慈悲だろう。今日は柳通りにある『ささ花』へ。

 前菜盛。そういうメニューが本当にある。

 造り。

 杉板焼。岩手産の松茸を使っていた。

 鯖寿司。

 先生、ご馳走様でした。ありがとうございました。