人形町『日本料理 汁はん』

 今月オープンしたばかりの和食店
 甘酒横丁の裏路地をウロウロしていて発見。開店祝いの花々が並んでいて、その中に『よし梅』からのものがあったので、気になったのだ。
 ちょっと中をのぞかせてもらい、予約してませんがいいですかと訊けば、板前姿のご主人らしき方が微笑む。
「どうぞ、どうぞ」
 作り笑顔じゃない、柔和な表情。気取らないその雰囲気に、すぐさま「ここで食べたいな」と思わされた。


 4000円〜8000円のコース、そして1000円前後のアラカルトもある。
 品書きは1品料理をさほど細かく書いておらず、板前さんとのやりとりするような形で注文。そういうことが苦手、という方は、コースにされるのほうがいいだろう。ちなみに、「お食事」がつくのは8000円のコースのみだった。

 組肴。
 キンカンの砂糖煮、ホタルイカの干物に軟骨の梅和え、メキャベツとヨモギ麩。
 このヨモギ麩が香り豊かで、良かった。どれも素材自体は珍しいものではないけれど、丁寧で丹念な味わい。そういう部分から、板前の性格とか心というのが伝わってくる。料理の妙はそういうところにあると思う。
 だから、いい料理を頂くと、会話をしているような気分になることがある。何か映画をみているような気持ちになることがある。目におのずと、面倒くさがらずひとつひとつ裏ごししたり、アクをとったりしている姿が思い浮かぶ。

 お造り。
 レモンで挟まれたシメサバが実によかった。またこれだけを食べに伺いたいたいぐらい。

 椀は白魚の入った玉子真蒸とタラの芽。ダシがとても品よく、かつ、うま味が濃い。

 そういや、八百屋にも山菜が増えてきましたね。

 自家製のアンキモ。脂のノリとコクはさほどでもないけれど、これもじっくり作られているのを感じる。

 
 ちょっと一杯、軽く使うのにもよさそうなお店。奥さんなのか、ホールの女の方も人懐っこい方でした。あえて難をつければ、生ビールのグラスにもうちょっとこだわってほしい。そして足元が寒くなければ、より良い。