恋しや・生ガキ・オイスタア



 以前も書いたが、私の前世は「ラッコ」か「蚊」だったように思う。
 それほどに生ガキやら貝の類いが好きだ。これを書くとザッツ・ジャパニなお腹&感性の持ち主は「うへー」と軽蔑するかのような面持ちで私を見るが、最高で41個食べたことがある。
 フン、軟弱な奴らめ。だまれだまれ、欧米人など婦女子だってダースを平らげる人は珍しくもないのだぞ。と、別にあちらさんを引き合いに出す必要も全然ないのだが。


 アメリカやヨーロッパを旅したとき、シーフードが身近に手に入る地方の人々の食生活に、生ガキがとても深く溶け込んでいることを知った。オーバーじゃなく、みなハーフダース単位で注文する。また、安い。チュルチュル平らげてもさほどしない。それから種類が様々で、味も様々なのだ。だから食べていて飽きが来ない。さっぱりしたものから旨味の濃いものに順序立ててメニューを構成してくれるところも多い。
 日本でも産地によって全然味わいが違うけれど、そういったことに対してさほど日本人は頓着しないように思う。
 最近でこそオイスターバーで種類別のカキを食わせる店が増えたが、高いばっかり、そしてさほどカキ好きでないスタッフがやっているのがヒシヒシわかる店ばかり。先のようにキチンと旨味に変化をつけてメニューを考えてくれ、合わせる酒まで組み立てられるスタッフなどまずもって少ないだろう。

 ここまで書いて止まらなくなった。
 大体、日本人全般「カキには気をつけろ!」という不思議な禁忌感を持ちすぎなのだ。そうだそうだ!
「明日は重要な会議があるから」
「ちょっと最近疲れ気味だし、生ガキは遠慮しておくよ」
 はっきりいうが、こういう人間の75%は「そういうセンシティヴで注意深い私」が好きなだけなのである。ひとりでウットリしている分にはいいが、そういう「私」を会食時に他者に対してプレゼンするなーーーーーーっ! この手の輩は実に多い。カキを勧められていらなければ、ただひとこと「僕はいいよ」でいいではないか!
 さらには
「昔あたったことがあって」
「父がカキにやられたのを見たことがあってねえ、以来怖くて」
 的な発言をよーーく聞くのだが、これだって実際何%の人が病院で「あ、あんたカキが原因の食中毒です」と診断されたというのだろう。

「やだな、なんか腹の具合悪い」
「昨日変なモン食べたんじゃないの?」
「そういえばカキ食べた」
「それだよー」

 医者かおまえは! 裁判長、これは紛れもなく素人判断による冤罪行為であり、カキの名誉を不当に汚すものであります! 私はこの不当なカキ差別を断固として許すわけには参りません! 
 などと変にエキサイトしてしまった……。「日本カキ愛護協会」とか作ろうかしらん。ちょっとブリジット・バルドー的な盲目的な怒りに一瞬身が燃えて……なんだか楽しかった(笑)。


 閑話休題。最近安くて鮮度のいいカキを食わせるところが多くなった。それが書き留めたかっただけなんだが……写真は渋谷の「むつ湊」にて。この日のサービス品だったが、3個500円也。もちろん独酌である。おかわりした。こういうとき店員さんが「へっ?」という顔を一瞬するのを見るのが好きなイヤラシイ私がいる。


 あ、どうでもいいのだが、なぜ私が前世『蚊』だったんじゃないかと思うかというと、私は蚊取り線香の煙にイジョーーーーーーーーーに弱いんである。すぐさまあのニオイを感知したら1分以内ぐらいに立ち去らないとテキメンに具合が悪くなる。蚊でないにせよ、多分前世で「いぶされた」過去があるように思う。カチカチ山のたぬきとかかもしれない。