浮世の垢の流しどころ

いわずもがな


 沖縄料理屋の雰囲気というのは独得のもので、どこも不思議な遊離感がある。
「遊」という字にはそのまま「遊ぶ」、という意味だけでなく、ただよう、さまよう、というデラシネな意味があるという。たとえば古来、春をひさぐ女たちを「遊女」と呼んだ。それは遊び相手という意味よりも、この世に根をはる居場所なし、という意味から来たのだそうだ。


 そんな刹那主義な意味合いではないのだけれど、沖縄料理屋にみちる島の雰囲気が好きだ。酔っ払ってくると、客も店側も心が浮いて、沖縄や離島に飛んでいる。うたかたのトリップ、ドラッグは泡盛



 杉並・梅里の友人と、はじめて高円寺の「抱瓶」を訪れた。沖縄料理の有名店だが、大箱でビックリ。

 生ビールはもちろんオリオン。都内でもすっかり珍しくなくなった。ジョッキで出してくれるのだが、サーバーの上にはビニールコップが。黒島の浜で、これでさんざん飲んだものだ。
「それで飲んでいい?」
「いーですよう。いつもはね、酔っ払っちゃった団体さんなんかがきたとき、『あ、このひとたちグラス壊すな』って思うと、これで出すんです」
 そういって店員さんが笑った。つられてこちらも笑う。変に大声で笑ってしまった。
 3軒目は、もうなんでもおかしい。




シークァーサー・サワー。妙に好き。