「とりあえず泡男」のせせこましさ
「とりあえず、泡を」
このセリフ、最近ワインバーで耳にすることが増えてるんですね。ええ確実に。ホントなんですってば。誰がはやらしてるんだか知らないが、着実に多くなってきている。
チョイ前までは「ドン小西」みたいなイカニモ系の人々がよく使っていたが、それが次第に低年齢化してきて「東京カレンダー男」系の衆が使い出している。
別に「泡」って表現が嫌いじゃないのだけれど、その辺の人達が一様に「とりあえず……泡を」というのが耳についちゃうんだよねえ。そのぐらい、「とりあえず泡男」は増殖している。あらたなバブル到来。
はい、どーでもいいじゃないかというのは百も承知ですが、なーんかもう、「死んでも『泡を』なんていうものか」という気分になってきている。ああイライラ。何を意地になってるんだ俺は!?
大体こーいう人に限って、しかとした好みなぞないんだもの。
もちろん「しかとした好み」なーんてなくたっていい。でもねえ、愛情がないのよ。
店員が3本ぐらい持ってきて、「これがクレマン・ド・ブルゴーニュ、そしてスペインのカヴァ、シャンパンは……」なんていった瞬間に「あ、カヴァで」とかいって終了、もう店員には目もくれず、オネーチャンと喋りだす輩が98%。
未知のものを店員に質問して楽しんだり、トライしてみようってな遊び心のひとつでも持ってほしいじゃないの。「知ってるもの」の名前が出たら「安心感」を優先する。「スマートに酒をオーダーできる俺」「ちょっと詳しい俺」をツレに見せたいってな「せせこましさ」を感じちゃうんですよ、「とりあえず泡男」には。そしてさらには「やっぱりカヴァよりヴーヴのほうが好きだなー」とかなんとか言っちゃうんだこの手の男衆は!
私はこういう場面に遭遇するたび、あの繊細なフルートグラスをパリンと握りつぶしたくなる衝動を抑えるのに苦労する。
ヴーヴがいいなら最初からヴーヴ頼めー! カヴァとシャンパン比べるなーっ!! ブーブーいうなーっ!!! って、別にダジャレが言いたかった訳じゃないです。はい。
もうちょっと喋らせてください。
先日とあるワインバーで、20代半ばとおぼしき感じのいいカップルが入ってきた。目をキラキラさせている。そこはちょっとした人気店なのだ。彼らの目は
「うわーここが○○だー来たかったんだー(きゃっきゃっ)」
という稚気にあふれていた。なんとなく微笑ましく思っていたら、男のほうが
「とりあえず、泡を」
ブルータスお前もかーーーーーーーーーーーーっ!? 「とりあえず泡男」かくも低年齢化しているのか。泡なんてこれから人生で食わされることたっくさんあるぞぉ。何も若い身空でアワアワしなくてもいいではないか。
軽くめまいがしてきた。河岸を変えて飲みなおそう。
写真は「Dosnon & Lepage」のブラン・ド・ノワール。旨味が濃くて力強いのに、ヒジョーに上品なシャンパン。新宿三丁目のワインバー『サウダージ』にて。
なんだか今日は変なグチめいたことを書きたくなってしまったのです。
分かったような事をはい、失礼いたしました。