ポポットのガレット

トリコロール


 学芸大学は懐かしい街だ。
 以前、僕はある女優さんの付き人をやっていた。そのひとが住んでいたのが学芸大学(以下、学大)だった。久しぶりに訪れたけれど、あらゆる街角であのひとの声や仕草が思い出されてくる。

 付き人は強烈な体験だった。
 その人自体が強烈だった。朝早いロケのときに買いに行くお結びやさん、パンの気分のときはあそこのサンドイッチ、ペットの病院はここ(何度も連れて行った。雨のときも「あなたが濡れたって絶対にワンちゃんは濡らしちゃダメよ!」と鬼気迫る表情でいっていた)、そして買い物の途中、やってられなくて買い食いをしたケーキ屋……。
 ちょっとウロウロするだけで、そんないろいろが在り在りと思い出されてくる。過去の亡霊でもあり、面白いネタの宝庫のように思える。
 サンドイッチ屋だけが、なくなっていた。


 亡霊と話していたら腹が減った。
 クレープリー『ポポット』へ。フランス・ブルターニュ地方の名物料理・そば粉のクレープが有名なお店。写真はチーズと卵のシンプルなもの。カリッとした焼き上がりにピンクペッパーがフワッと香る。これにハムを入れるものが有名なようだが、入れないほうが私は好きだ。

 おいしいんですよ。おいしいの。でも、やっぱり途中でちょーっと「飽きる」んですね。ピザにも感じてしまうことなんだけれど。アルコール飲みつつだと気にならないんですけどなあ。
 なんかちょっと途中でアクセントつけたり、出来ないモンだろうか。