焼ナスの味


 子供の頃、偏食がひどかった。
 特に嫌いだったのが、グリーンピース。あんな小粒ものをどうしても私は飲み込めなかった。被害者ヅラをするのも嫌だが、小学校2年生のときに、先生が無理やり口に入れた。先生は羽交い絞めにするように私の口を押さえた。飲み込むまで離してくれなかったが、それ以降もう絶対に食べられなくなった。
 放課後になってもひとり、給食を食べている子供の話がたまに聞かれるが、私もそのひとりだった。みんなが掃除をしている間、私は冷えた給食とにらめっこをしている。
 みんながホウキで床を掃くと、暗幕だまりをバックにパーッとホコリが立ち上がる。汚いなあ、と思いながら、給食を裂き割スプーンでいらっていた。
 グリーンピースにピーマン、ナスにシイタケ。いっぱい食べられないものがあった。


 どうしてこんなに好みって変わるんでしょうね!?
 ああ、昔に戻って幼きアツシに教えてやりたい。ナスが大好物に変わる不思議を! 焼ナスに目がなくなるなんて、絶対にヒトケタ年齢の私は信じられないだろう。
 焼いたナスの甘味ってのはナスだけにしかないものですね。トロットロに焼いて、オカカと醤油で頂きたい。夏はナスが安くていいなあ。たっぷり切り目を入れた揚げナスをポン酢で、ショウガと糸削りをたっぷりかけたのもいいなあ。麻婆茄子も食べたくなってきた。
 写真は渋谷の居酒屋『のんきや』にて。ハムカツ、はんぺんチーズ焼、鯵フライにいんげんのゴマ和え。懐かしい昭和の香りがする一杯飲み屋。夜遅くまでやっていて、遅めに仕事を終えた近所の人々(呑兵衛ばっかり)が集まる店です。神泉の商店街からちょっとは行ったところにある隠れた佳店。