柏餅と、ドラえもん

 もう語りつくされているけれども、藤子・F・不二雄先生(どうしても先生、と呼んでしまう)の偉業を、あえてひとつ私なりに足してみたい。


 あのかたは、「うまそうな絵」を描く達人でいらした。おいしそう、というより、うまそう。ヨダレを垂らさせるほどの絵を描ける人は、藤子・F・不二雄先生をおいて他にない。
 (『美味しんぼ』も『クッキングパパ』も、「上手な食べ物の絵」だと思うけれど、うまそうな絵、というのとは違うと思う)





 昔、安野モヨコさんが「藤子先生の描くケーキが食べてーっ!」と書いてらしたのを思い出す。カップケーキみたいな感じで、スポンジの上には生クリーム、上にはチェリーのシンプルなケーキ。分ッかるなあ。
 僕なら、柏餅。今尚お店で見るたび、ニューロンが「食べたい!」と大騒ぎ。即断でレジへ。『ドラえもん』に出てきた柏餅は、それはそれはうまそうだった。あんなにシンプルな絵なのに。

 
 柏餅を食べるたび、小さい頃「うまそうだなあ」と思ったこと気持ちがよみがえる。母・フジエに「買ってェ〜」とねだったことを思い出す。
ドラえもん』から「これ、食べてみたい!」と食の知的欲求を刺激された子供って、相当な数なんじゃないだろうか。
 アジアやヨーロッパでも『ドラえもん』は紹介されているときく。私のような食いしん坊の子供が、世界のどこかで「KASHIWAMOCHI……KUITE〜」などと尽きせぬ夢想をしているのだろうか。


 明日はこどもの日。しょうぶ湯でもつかりに行くか。