小津映画と鮨
鮨屋、というものに対して
まったく気構えなく、自然体にあれる人というのは
どのぐらいいるもんだろうか。
鮨屋の作法、みたいなものを気にし過ぎる人は窮屈この上なく。
さりとて変になじみ過ぎてる人も、いじましい。
頓着が過ぎるのも野暮ったいし、
かといって「粋」が何かもよく分からず。
鮨屋のシーンといえば思い出すのが昭和35年の日本映画、
『秋日和』のオヤジたち。そのまったく自然体な佇まいだ。
監督は名匠、小津安二郎。
ひとことでいって、淡々としている。
自分たちが働き続けてきた末に手に入れた立場なりの贅沢、というものを
一切の気負いなく受け入れているその姿。
一様に重役クラスのオジサンたちなんだが、
ブルジョアの持つある種の横暴さも、傲慢さも、歓楽としてのグルメも、そこにはない。
ボソボソッと喋っては、黙々と食って、飲んで。
それだけなんだが、どうにも「豊か」なのだ。
小津映画の魅力は様々あれど、
日本の年配の男たちが、食と酒に美しく対峙し、
その時間を楽しむ姿を描き出したという点も忘れてはならないと思う。
小津さんはどんなふうに、鮨屋で振舞っていたのだろうか。
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写真は、渋谷「五徳」のもの。
東急本店からさらに進んで、神山町のほうにある。
こていながらも、さっぱり美しい店。
コースにはおつまみが4、5品つくのだけれど
ナスのムースが忘れ難いうまさ。
編集Mさま、身に余るご馳走をありがとうございました。