エクレアぐるひ

パリに旅行した人、それも食いしん坊の方なら分かるだろうけれど、
しかしまあどのウィンドウも美味しそうで、うまそうで。
パン屋、魚屋、肉屋、市場にたっぷり詰まれた果物やチーズ……。
中でもパティスリーはまさに「蠱惑的」という表現、文字がピッタリの世界。
小さい頃、ヘンゼルとグレーテルの話を読んだときのことを思い出してしまう。


だいたいどのお店でも、ウィンドウの一番はじっこあたりに置かれているのが、エクレア。
そうそう、旅行前に友人がこんな話をしてくれたっけ。
「エクレアってフランスだと全然違うもんなんだよ、
あんな柔らかくないの。もっとパリッとしてて、皮が美味しいの。
クリームも濃厚で。あれだけは日本で食べられないねえ」
といっていたのを思い出し、口にしたが最後。


たっ……、たまらん!
とりたてケーキに執着はなかったのだけれど、以来エクレアだけは別になってしまった。
あの味を求めて、日本でも「らしい」ものがあるとついつい買ってしまう。
写真は三宿の交差点を世田谷公園のほうに行ったところにある
「アルティザン・テラ」(ARTISAN TERRA)のもの。
これは良かったなあ。香りがいい。
食べた瞬間、甘さがグッときて、それをキリッと苦みが引き締めて。
皮もサクッとパリッと、うーんこれこれ。

これは友人が食べたピスタチオとマスカルポーネのムース、だっけかな。
店内でお茶も出来ます。これがまたいい紅茶だった。

世田谷マダムがイレカワリ・タチカワリで賑わってました。パンも売ってます。


○追記
あってるっけ……と今アップ後に「ヘンゼルとグレーテル」を調べてみたら、
まあ陰惨な話だったのですね。無知蒙昧をさらけ出すようですが、
今まで子捨ての話だとは思わなかった。森で迷子になったと信じてました。
確かにちょっと考えればわかりそうなもんだが。
さらには食人嗜好の話だったんですねえ……深沢七郎大岡昇平を足して2で割ったようなもんか。違う。
いやはや、勉強になりました。
(文=白央篤司)